福祉先進国とは
福祉先進国として知られる北欧諸国や他の国々は、高齢者福祉において独自の政策を展開しています。このブログでは、日本と人口や制度などを比較しながら、それぞれの国の特徴や動向を探ります。
福祉先進国の代表的な国々
スウェーデン

スウェーデンは福祉先進国として知られており、高負担高福祉モデルで、在宅介護サービスが充実しています。高齢者の介護制度にはいくつか特徴があります。以下に詳しく説明します。
高齢化率と全体人口
スウェーデンは高齢化社会であり、一人の高齢者(65歳以上)を3.1人の生産世代(20-64歳)が支えています。人口は約1081万人(2023年)でした。現在の高齢化率は20.5%(日本は29.1%)ですが、2000年に日本が追い抜くまでは、世界で最も高齢化の進んだ国でした。
在宅サービスの特徴
スウェーデンでは成人した子どもが親と同居する習慣がないため、高齢者にとって介護サービスの利用が生活の支えとなっています。ホームヘルプ(介護職員が自宅に来るサービス)が介護サービスの中心であり、自宅での介護をサポートしています。24時間対応の包括ケアが行われており、本人が望めば最後まで自宅で暮らせる仕組みが整えられています。
地方自治体の役割
スウェーデンは地方自治体が大きな権限を持っています。自治体は地域内に住む住民が必要な援助を受けることができるよう、その最終責任を負っています。介護サービスの提供内容や利用料金はすべて自治体の判断に任されており、高齢者は所得に応じて介護サービスを利用できます。
税金と介護制度
スウェーデンの介護制度はすべて税金で賄われています。地方税は所得税が中心で、介護や保育などの生活関連サービスに利用されています。このシステムにより、市民は自分が払った税金が身近な生活関連サービスに使われていることを実感しやすくなっています。
課題と対策
人手不足や民間企業の拡大など、スウェーデンの介護制度には課題もあります。日本はスウェーデンと比べて近所づきあいが強くなく、老後の備えも十分ではないことが課題です。総合的な対策を講じる必要があり、介護だけでなく社会保障制度全体を考慮することが重要です。
デンマーク

デンマークも同様に高負担高福祉モデルで、在宅ケアに重点を置いています。高齢化対策モデル国として知られています。デンマークは「成熟社会」とも呼ばれ、医療費、出産費、教育費などが無料で提供されています。以下に、デンマークの特徴的な制度と充実した在宅サービスについて詳しく説明します。
高齢化率と全体人口
デンマークの人口は約596万人(2023年)で、高齢者(65歳以上)の割合は約15.4%(日本は29.1%)です。平均寿命は77.96歳で、男性は75.64歳、女性は80.41歳です。
医療費無料
デンマークでは医療費がほぼ無料です。「家庭医」と「病院」の2段階の診療システムがあり、病院での診療は無料です。重病人の方はスムーズに診療を受けられる仕組みがあります。
出産費・教育費無料
出産費と幼稚園から大学までの費用が無料です。大学に通うことが当たり前で、お金をもらって大学に行くことが一般的です。
高齢者福祉
デンマークの年金制度には「国民年金」「労働市場付加年金」「早期退職年金」があります。特に特殊なのが「国民年金」で、収入や家族構成に応じて調整されます。
在宅サービスの特徴
デンマークでは在宅ケアを推奨しています。要介護認定や利用制限がなく、必要なときに無料で使えます。高齢者三原則(生活の継続性、自己決定、残存能力の活性化)に基づいて、自立を支援するシステムが整備されています。デンマークの社会福祉制度は、高齢者の自立を重視し、適切なサービスを提供することを目指しています。日本でも「成熟社会」に向けた制度改革を考える際に、デンマークの取り組みを参考にすることができるでしょう。
デンマークの福祉制度の課題
地域格差
デンマークは上記の通り地方自治体が大きな権限を持っているため、地域ごとにサービスの質や提供内容に差があります。都市部と地方部での格差是正が求められています。
社会的孤立
在宅ケアの充実によって高齢者の社会的孤立が問題となっています。在宅ケアの利用者が外出機会を持つための支援が必要です。
フィンランド

在宅介護を中心とし、家族介護者をサポートする近親者介護サービスがあります。
高齢化率と全体人口
2024年現在フィンランドの全体人口は554.1万、高齢化率は約23.27%です(日本・イタリアに次いで3番目)。2032年には高齢者人口が少年人口の二倍以上になる見込みです。2041年には労働年齢人口が総人口の60%未満になる予測もあります。
福祉制度の特徴
フィンランドではすべての社会福祉サービスや保健医療サービスが地方公共団体によって行われています。自治体職員の半数以上がこれらのサービスに従事し、地方公共団体の支出の約50%を占めています。フィンランドの社会保障制度に含まれる各種手当やサービスは、誰もが受ける権利とされています。
日本にはない近親者介護サービス
フィンランドでは「近親者介護サービス」という制度があります。これは高齢者の家族や友人などが自宅で介護を提供した場合、その対価として手当金が支給される制度です。
また、 フィンランドでは在宅介護が多く、政府は在宅介護を望む人々の権利を保障しています。また、親族介護者に手当金や休暇を支給する「親族介護支援法」も施行されています。
日本との介護の違い
フィンランドでは1970年に「子の親に対する扶助義務」が廃止され、福祉サービスの責任は地方自治体に移されました。日本とは異なり、子が親の介護を担う必要はありません。フィンランドでは国民皆保険制度が整備されており、国民と同様の公的医療サービスを外国人も受けることができます。
制度の課題
フィンランドの介護士の給与は日本より高いものの、他の職業と比較すると高くはありません。手当金や休暇の保障もありますが、担当介護士の負担も考慮する必要があります。夏と冬の日照時間の差が激しいため、認知症の人々が昼と夜の区別をつけにくく、夜間に外へ出てしまうことがあります。安全電話やアラームなどのサービスが活用されています。
アメリカ

アメリカでは公的な介護保険制度は存在しません。高齢者向けのメディケア(連邦政府が主体)や低所得者向けのメディケイド(州が主体)が一部介護を担っていますが、基本的には自己負担もしくは民間保険に頼ることになります。
高齢化率と全体人口
アメリカは高齢化社会に直面しており、高齢者の人口が増加しています。2024年時点での高齢者人口は約5709万人で、総人口に対する割合は17.13%(日本は29.1%)です. この高齢化の傾向は、医療技術の進歩や健康意識の向上により、平均寿命が延びていることが要因とされています。
福祉制度の特徴
アメリカは公的な介護保険制度は整備されていませんが、民間の介護保険が発達しています。特にロングタームケア保険 (Long Term Care Insurance) と呼ばれる民間の保険会社が、介護が必要になった際の保証を提供しています。この保険は、高齢者や障害者が自宅での生活を維持するために必要なサービスをカバーしています。具体的には、在宅ケア、施設入所、リハビリテーション、看護、ホームヘルプなどが含まれます。ただし、加入には一定の条件があり、保険料も高額です。
公的な介護保険制度がない理由
アメリカの文化的背景により、自立を重視しています。多様な人々が住むアメリカでは、地域コミュニティもさまざまで、個別のニーズに合わせたサービスが求められています。そのため、公的な介護保険制度を整備する際には、個々の選択肢を尊重する視点が強調されています。
アメリカは自立を重視する文化的背景から、高齢者の生活も個人の責任で行うべきという認識が一般的です。高齢者の90%は一般の住宅に住んでおり、70%は家族によって介護されています。女性が介護者として多く、在宅介護を行う女性たちの経済的損失は社会問題とされています。
民間の介護保険制度について
民間の介護保険は充実していますが、高額な費用が特徴です。日本とは異なり、自己負担が必要なため、収入や貯蓄が不足している場合は加入が難しいこともあります。また、保険会社ごとにカバー範囲や条件が異なるため、契約前によく比較検討する必要があります。
- 高齢者用アパート: 自立生活が可能な高齢者向けのアパート。月額費用は約$1,200~$2,000(約30万円)。
- 介護付き住宅またはアパート: 介護を必要とする高齢者向けの施設。月額費用は約$2,000~$3,000(約45万円)。
- 介護付き住宅・レジデンシャルケア: 介護を必要とする高齢者向けの施設。月額費用は約$2,000~$4,000(約60万円)。
- ナーシングホーム(認知症専門病棟): 看護師や医師が常駐し、介護だけでなくリハビリや医療行為が必要な高齢者向けの施設。月額費用は約$4,000以上。
- 終身介護つき施設: 認知症専門病棟と同じ機能が備わった総合施設。入居時に別途金額がかかります。
日本との介護の違い
日本はマニュアル重視で丁寧なケアを行っていますが、アメリカは個別を重視し、患者のためになる介護を行っています。アメリカでは、患者の意向や家族の意見を尊重しながら、最適なケアプランを立てることが重要視されています。
制度の課題
アメリカでは介護人材不足が深刻であり、民間の介護保険料が高額なため、課題となっています。また、地域ごとにサービスの質や提供内容に差があることも課題とされています。これらの課題に対して、政府や保険会社は改革や対策を進めていますが、持続可能な介護制度を構築するためにはさらなる努
オーストラリア

オーストラリアの福祉政策は、北欧の「社会民主主義=高福祉・高負担」型と米国の「自由主義・セルフディフェンス(自己防衛)」型の中間の「中負担・中福祉」を基本方針としています。
年金制度を活用し、在宅ケアを推進しています。
高齢化と介護制度
オーストラリアは高齢化に直面しており、高齢者の社会的なつながりを向上させるために先進的な取り組みを行っています。以下に、オーストラリアの高齢化と介護制度について詳しく説明します。
高齢化率と全体人口
オーストラリアの人口は2526万人、高齢化率は約17%であり、人口の6人に1人が65歳以上の高齢者です。高齢者は「支えられる人」ではなく、可能な限り地域に参加して活性化する役割を担うことが求められています。
福祉制度の特徴「アセットベースト・アプローチ」
オーストラリアではアセットベースト・アプローチ(自分と地域の資源を活用する方法)が広まっています。高齢者は自身の持てる力(資源)と地域の社会的資源を生かして力強いコミュニティを作っていくことを目指しています。
社会保障制度の特徴
所得保障制度と医療保障制度:
- 所得保障制度(年金、家族手当、生活保護)および「メディケア」と呼ばれる医療保障制度は、社会保険方式ではなく、原則的に一般財源で賄われています。
- メディケアは、全国民を対象とする普遍的な医療サービスを提供しています。
退職年金基金制度 (Superannuation)
退職後の所得保障制度として、被用者個人ごとに積み立てる強制貯蓄制度があります。
公的年金(Age Pension):
- 給付対象者: 国内に10年以上の居住期間を有し、年金請求時に国内に居住していることが要件です。2019年現在、65歳以上で受給が開始されます(2023年には67歳に引き上げ予定)。
- 給付額: 所得や納税額とは無関係に一定額が支給されます。単身者の場合、平均賃金の27.7%、夫婦の場合は41.8%です。年金額は毎年3・9月に消費者物価指数の変動により改定されます。
- 所得調査と資産調査: 所得や資産が一定以上の場合、年金額が減額または支給停止されます。
- 資産調査対象: 金融資産、自動車、別荘、趣味のコレクションなどが含まれます。
私的年金(スーパーアニュエーション):
- 給付対象者: 18歳以上で月収450豪ドル(約36,000円)以上、週30時間以上の被用者(パート労働者を含む)に対して加入が義務付けられています。
- 拠出: 企業は被用者の賃金の9.5%(2025年に12%まで段階的に引き上げ予定)をスーパーアニュエーションに拠出します。
- 資産額: 経済が順調に推移する中、スーパーアニュエーションの資産額は2.8兆豪ドルに達しています。
オーストラリアの年金制度は、公的年金と私的年金のバランスを取りながら、老後の所得保障を提供しています。
介護保険制度はない
オーストラリアには介護保険制度は存在せず、主として税財源により介護サービスが提供されています。連邦政府、州、地方自治体、民間団体などが各制度を機能的に分担し、並列的にサービスを提供しています。ボランティア活動が高齢者介護を支える柱となっており、「ボランティア先進国」とも呼ばれています。認知症の中度までは在宅でケアする支援体制が進められています。認知症患者向け在宅ケアパッケージが作られており、先進的な取り組みが行われています³。
課題
将来の高齢化に伴い、医療・高齢者ケアなどが危機的な状況になることが予測されています。政府予算における最大の歳出項目である退職年金への国庫支出が増加しており、次世代が高い税負担を強いられる状況が懸念されています。
日本
日本は平均寿命が長い一方で、少子高齢化による介護人材不足が課題です。他国と比べても、日本の介護保険制度や介護者支援の在り方には独自性があります。
高齢化率と全体人口
日本の高齢化率は29.1%で世界一位です。総人口は1.257億人です。この高齢化率は、令和47年(2065年)には38.4%に達し、国民の約2.6人に1人が65歳以上の者となる社会が到来すると推計されています。 日本の福祉制度は、高齢者、障害者、母子家庭など社会生活を送る上で様々なハンディキャップを負っている人々が、そのハンディキャップを克服して安心して社会生活を営めるよう、公的な支援を行う制度です。
日本は社会福祉は低負担・中福祉
日本は社会福祉は低負担・中福祉国家といえますが中福祉を維持するだけの税負担もしておらず、膨大な借金を将来世代へのツケに回しています。その上さらに増税するという高福祉・高負担は現実的には非常に難しいのです。
2025年問題
これは、2025年には国民の5人に1人が後期高齢者となる超高齢化社会を迎えることから名付けられました。この問題は、社会保障制度の維持はもちろん、減少する現役世代の負担が重くなることで日本経済にも深刻な影響を及ぼすと考えられています。
他の福祉先進国との比較
福祉先進国といわれる北欧のスウェーデンやドイツ、フランスに対し、日本はかなり低い水準となっており、公的医療保険が未整備であるアメリカと同水準となっています。具体的には、日本の社会保障給付の規模を部門別に比較すると、年金では米英を上回るが、仏をやや下回る規模で、医療では米国や欧州諸国を概ね下回る規模となっています。
北欧で高負担高福祉国家が多い理由
- 個人重視の税制:北欧の税制は世帯単位ではなく、個人単位が徹底しています。これにより、国民が総出で働き、税金を納めることが前提となっています。
- 教育と医療の無償化:北欧では教育や医療・介護などで自己負担がゼロになるケースもあるため、実際の負担感は低いとの指摘もあります。
- 透明性の高い政治:北欧の政府や役所の透明性が高く、高い負担率にも関わらず不満が出にくいと考えられています。
- 人口と生産性:北欧諸国は人口からみれば小国ばかりです。そのため、一人ひとりへの投資を大事にし、一人ひとりの生産性を高めてきました。
地政学的な視点
北欧諸国は少ない人口で競争力を維持するため、リスキリング(学び直し)の充実などを通して一人ひとりの稼ぐ力を高めることに腐心してきました。また、北欧に暮らす移民の数は過去20年で2倍に増え、主流だった欧州域内の出身者に加え、中東を含むアジアや北アフリカからの移民・難民が急拡大しています。これらの要素が、北欧諸国が高負担高福祉の社会を維持する一因となっています。
まとめ
世界の福祉先進国は、それぞれの国民性や文化を反映した政策を展開しています。日本も、自国の国民性を重視し、制度を時代にあわせて変えていくこともそうですが、地域コミニティーで介護を支えていく仕組みの構築が非常に重要になりそうです。